プリティー研究所

プリティーリズムの考察など

キンプリ KING OF PRISM Shiny Seven Stars 第5話の感想と批判 氷室聖と法月仁の物語は失敗している

キンプリSSS第5話の感想を書く。

今回はPRISM1の大会であることは同じなのだが、エーデルローズ側ではなく、その対戦相手のシュワルツローズ側がメインで描かれる。第4話まではエーデルローズ側のプリズムショーのみで、シュワルツローズ側もプリズムショーを行っていたのだが、省略されていた。そのシュワルツローズ側のプリズムショーが今作では初めて描かれるのだが、3DCGではなく、手書きのプリズムショーとなっている。

本編の内容としては、第5話でスポットが当たるのは高田馬場ジョージなのだが、シュワルツローズの総帥である法月仁や、高田馬場ジョージのゴーストシンガーである池袋エィスにもスポットが当たる。高田馬場ジョージはシュワルツローズで売り出し中のアイドルユニット、Theシャッフルのリーダー。実は歌は口パクであり、歌を担当しているゴーストシンガーの池袋エィスは、Theシャッフルの補欠。エィスは口パクのジョージが評価され、自分が日の目を見ないことに不満を持っている。そんな時、ジョージの幼馴染であるミヨが東京に訪ねてくる。ジョージは子供の頃に太っていたこと、法月仁に憧れていたことなどが明かされる。ミヨが結婚すると聞いてジョージは落ち込むが、そんな素振りを見せずにPRISM1のステージに臨む。しかし、ジョージの人気を妬む者からステージ中にエィスのマイクのケーブルを外すという嫌がらせを受ける。歌声が出ないにもかかわらず、ステージを完璧にこなすジョージを見たエィスは、ジョージと共にプリズムジャンプを飛ぶ。

よかった点は、ジョージのような実は弱いのにハッタリを貫き通すというキャラクターは面白い。弱いと言っても、歌が歌えないというだけで、プリズムショーの実力的にはないわけでもなさそうだが。アイドルとしては実は腹黒というキャラクターはいても、こういうキャラクターはかなり希少な気がする。キャラクターの面白さだけで言えば、今回が一番よかった。Theシャッフルもドライな関係で好感を持てた。男同士の関係はあまりべたべたせずに、普段は軽口叩きあいながらも、どこかで認め合っている関係の方がよい。

プリズムショーは3DCGではなかったが、エィスがステージに乱入したのに、ジョージが作り出した幻影として認識されているのが面白い。前作ではアレクやヒロが分身を作るという技を使用しており、途中で別の誰かが出てきても技の一部という認識があったため、その認識を利用してジョージらしいプリズムショーにするというアイディアは新しい。この作品は全体的にこういう工夫があるから退屈しない。まあ意味のない捻りや新しくもない捻り、滑っている捻りもあるが。

悪かった点は、ジョージの他にエィス、氷室聖と法月仁の関係についての話を描いたために、全体的に描写が不足している。ジョージは法月仁に憧れているのだが、今回の氷室聖と法月仁の関係についての話と、ジョージとエィスの話には一切接点がないため、話に組み込めておらず、一話内でのまとまりに欠ける。法月仁を描くにしても、ジョージが憧れる「完璧で正確で汚い手を使っても必ず勝つ」という部分を掘り下げたり、父親や兄弟との関係でジョージと共通する部分があれば意味があったと言えるが、そうではないのでジョージの話を削っていることにしかなっていない。

ジョージが糸工場の息子ということをミヨがTheシャッフルのメンバーに教えるシーンで、ジョージの父親の話題になるのだが、そこで突然ジョージが怒り出す。父親にプリズムスターになることを反対され、何らかの確執があったのだと思われるが、何かがあったと匂わせる情緒的な雰囲気だけで、それ以上は描かれない。ジョージにスポットが当たる回なのに、ジョージの迷いや決意が雰囲気だけで詳しいことがわからなくなってしまっている。ジョージの虚像のアイドルというキャラクター的に、すべてを明かさずに、ある程度謎が残ったままの方がよいという意図かもしれないが、他の部分(氷室聖と法月仁の関係についての話)がジョージのキャラクターにとって意味があるわけではないので、そういう意図もないと思われる。つまり、単純に話を削られているだけ。

エィスの「ジョージに反感を抱いていたが、ジョージを見直す」という過程にしても、ジョージがステージ上では完璧にこなそうとすることなんて、ゴーストシンガーとして何度もジョージのステージ上での振る舞いを見てきたエィスは以前からわかっていたはずで、機材トラブルよりも、もう少し別のエピソードが必要だった。それに「失恋したのにステージ上ではそんな素振りは見せない」と「機材トラブルが起きてもステージ上ではそんな素振りを見せない」は重複しているからどちらかだけでよかった。ジョージはエィスがいなければ歌が歌えなくなり困るはずなのに、ぞんざいな扱いなのも違和感がある。エィスがジョージから実は認められていると気づくようなエピソードも必要だったのではないか。「ジョージの過去と決意、エィスがジョージを詳しく知ることで見直す」という大筋自体はいいのだが、描写が足りない。今回も前回までと同じく、「キャラクターがこの話の中で新たに発見したこと」がない。

やはり氷室聖と法月仁の確執の話がいらない。そもそもレインボーライブの中盤までは、「観客の視点に立ち戻るべき」と観客を重視した流動的な価値観を支持する氷室聖と、「その時の流行になびくのは嫌いです」と伝統を重視した固定的な価値観を支持する法月仁という対立に興味を持てたが、レインボーライブの終盤は、第34話の「他人の視線なんて気にしてないわ」という台詞に象徴されるように、観客もルールも無視した何ものにも縛られない自分の心を重視するという展開になり、この二人の対立も無意味なものになってしまった。さらに実は兄弟なんて設定が加えられたために、思想的対立ではなく、単なる感情の問題にしかなっていないので興味が湧かない。キンプリにおいてこの二人は危機的状況やプリズムショーの大会という舞台を用意するための道具でしかなかったのに、今更それ以上の意味を持たせても面白くなるとは思えない。

これで法月仁が不幸アピールし始めて、同情を誘い、氷室聖を再起不能にした罪を償いもせずに和解するような展開になったら最悪だ。あるいは、法月仁が共同体に許容され取り込まれることで「救われた」なんて展開になるのも最悪。憎しみ続けながら孤独に生きていく、そういう展開なら評価してもいい。