プリティー研究所

プリティーリズムの考察など

キンプリ KING OF PRISM Shiny Seven Stars 第7話の感想と批判 レオはステレオタイプの犠牲になった

キンプリSSS第7話の感想を書く。

本編の内容としては、第7話でスポットが当たるのは西園寺レオ。華京院学園の学園祭では、毎年ミスター&ミス華京院を決めるコンテストが開かれている。一番盛り上げられた者が優勝するというこのコンテストに、エーデルローズの7人は女装して参加することになる。華京院の生徒でなくとも出場可能であり、全国から参加者が集まってくる。そんな折、レオの姉のきらりとゆらりが寮に訪ねてくる。レオと一緒に上京してきたきらりとゆらりは、実家のある北海道に戻ろうとしており、レオも一緒に北海道に戻らないかと誘われる。レオは北海道に戻ろうか迷い、ミス華京院には出場できないとみんなに告げる。レオが小学5年生の時、友達から悪口を言われたり、急にしゃべってくれなくなり、学校に行けなったこと、そんな悲しい時に心を癒してくれたのはプリズムショーだったこと、心配してくれる姉の期待に応えるため、姉と一緒に上京し、エーデルローズに入ったことが明かされる。そしてレオは北海道に戻らないことを決心し、姉と父母をミス華京院に呼び、プリズムショーを披露する。

良かった点は、これまでの回の舞台は主にキャラクターの実家であり、学園生活や学園内でのイベントは描かれなかったが、今回は学園内のイベントが描かれたのは新鮮だった。レオがタイガの制服を着て姉たちと接する姿も新鮮だったし、各キャラクターが他のアニメ風の衣装を着てコンテストに出るのも面白かった。

悪かった点は、「女の子みたいな男の子」のテンプレ的な物語となっていて、レオの独自の魅力的な描写が乏しいことである。聞き取れなかった部分もあるが、これは音声や文字で描写された小学生の頃のレオへの悪口一覧である。

「レオっていっつも男子にべたべたしてるよね」「男子との距離、近すぎない?」「なんだあれ」「(聞き取れなかった)に気安く触らないでよ」「気持ち悪い」

「レオっていつも女子とばっかり喋ってるよな」「ほんとは女なんじゃねーの」「あいつ何なんだよ」「きもっ」

「いじめられて当然だよね」「別にこれっていじめじゃないよね」「うぜー」「空気読め」「推しに近づかないでほしいよね」「しゃべらないでほしい」「(聞き取れなかった)はこっちの方」「あれかっこいいと思ってんのかね」「むしろ謝って欲しいくらい」

「いじめられて当然だよね」「それなw」「氏ねばいいのに」「無視しちゃおう」「賛成!ww」

「今日もベタベタ触ってきて超キモかった…」「お前のこと好きなんじゃねーの?」「ありえる!」「ヒューヒュー!」「ふざけんなw」「明日、一発ぶん殴るw」

「いじめられて当然だよね」「空気読めてないよね」「しゃべらないで欲しいんだけどw」「あれカワイイと思ってんのかねw」「uzeeeeeeeeeee!」「また今日も来てたね」「近づかないで欲しい」「別にこれっていじめじゃないよね?」「KY」「アイツが原因だから」「消えて欲しい」「気分が悪いのはこっちの方!」「むしろ謝って欲しいぐらい」

男子にベタベタする男子に嫉妬する女子、そんな人いるのだろうかというのはさておき、「お姉さまたちは、私が女の子みたいになったのは、自分たちのせいだと謝りました」という台詞から、姉は自分たちのせいでレオが女の子みたいになったことが悪口を言われる原因だと思っていると解釈できるが、描写されたものからは、レオが女の子みたいなことが原因だと確定できない。「レオっていつも女子とばっかり喋ってるよな」「ほんとは女なんじゃねーの」の2つ以外は汎用的悪口であり、誰に向けられても違和感がない内容である。

レオは「昨日まで仲良くしてくれた友達たちは、急にしゃべってくれなくなりました」と言っていることから、もともとは友達だったわけだ。だとすると、レオが女の子みたいなのは最初からわかることであるため、女の子みたいなことが原因とはますます考え難い。「女の子みたいな男の子だからキモイ」と直接的に言われているわけではないし、別の原因で嫌われていたり、あるいは反抗しなそうだから標的にされているといった、本人に原因がない可能性もある。そういう場合に、叩きやすかったり目立つ特徴を後付けで悪く言われているだけで、原因が悪口の内容に反映されているとも限らない。それなのに「女の子みたいな男の子だから嫌われる」というステレオタイプが前提とされている。

エーデルローズで他のキャラクターと初対面の時、ミナトの手を両手で握ったり、いきなり「ユキ様とお呼びしてもよろしいですか?」と聞いたり、どちらかといえば、こういう馴れ馴れしさが顰蹙を買ったのではないだろうか。別にその行為を否定するつもりはないし、直すべきだとも思わないが、悪口を言われたり無視されて傷ついたはずなのに、物怖じする様子もなく、馴れ馴れしいことが嫌われる可能性はまったく疑わずに、女の子みたいなことが原因だから男らしくなろうとする以外を考えないのはどこかズレている。そういう空回りっぷりが魅力のキャラクターだと描こうとしているのかもしれないが。描写的には本人に原因があるとすれば「男らしさ」「女らしさ」という話ではなく、「性別は関係ない振る舞い」にあるのではと思わせる描写なのだが、レオが「女の子みたいな男の子」というキャラクターであることから、ありがちなジェンダーの問題にすり替わり、「私らしく生きていきたい」というこれまたありがちな結論になるため、レオの独自の魅力が描かれていない。

「レオっていっつも男子にべたべたしてるよね」「男子との距離、近すぎない?」あたりは事実なのではないか。「事実であること」「嫌うこと」「悪口を言ったり無視すること」はすべて別であり、「ベタベタすること」がいじめることの正当化にはならないが、「可愛いものが好き」と違って、「ベタベタすること」は他人への接し方の問題なわけで、それを「他人にどう思われたって構わない」で終わらせるのもどうなのか。しかも、「ベタベタすること」には人から嫌われても拘るだけの理由や、貫き通すだけの価値があるという描写がなく、結論を出すには早いにもかかわらず、「他人にどう思われたって構わない」と言うのは、単に自分や他人と向き合っておらず、不誠実にしかなっていない。

レオは「女の子みたいな男の子」という設定以上の魅力というか、何かに貢献するようなキャラクターの良いところが描かれていない。例えば、シンはメイン回はまだだが、前々作で悲しみに暮れる観客を湧かせるプリズムショーをした。ユキノジョウはメイン回ではないが、今回の「男らしくなりたい」というレオに対して、本人なりに具体的な解決方法を考えて、歌舞伎の所作を教えたり、今回はユキノジョウの好感度の方が上がった。タイガは祭りの危機を食い止めた。カケルは前作でエーデルローズの借金の返済のために奔走したし、今作のメイン回ではその責任でマダガスカルに出向させられるという話である。ミナトはみんなの食事を担当しているし、今作のメイン回ではミナトが実家に帰省したことで困るという話である。ユウはメイン回はまだだが、みんなの楽曲を担当している。では、レオはというと、みんなの衣装を担当しているのだが、そうであれば今回のメイン回では、レオがみんなの衣装を担当していることについての話を掘り下げるべきだったのではないか。

メイン回以外では、例えば第2話ではカケルやミナトはユキノジョウの本音を聞こうとしたり、第6話で他のキャラクターは事情があってミナトが作った朝食を完食できない中、タイガはミナトが作った朝食を完食していたり、レオはそういう他のキャラクターを助けようとしたり喜ばせるようなシーンもない。貢献できないキャラクターは駄目だというわけではないが、レオは貢献できる能力がないのではなく、見た目が可愛いから画面が華やかになっているという意味で貢献しているという認識で、それ以外の魅力を描けるのに描くことを放棄しているように思える。

あとTheシャッフルの御徒町ツルギもコンテストに参加するのだが、3iizeという一人だけ極端に低い点数をつけられているのが気になった。今までこのような特に理由もなく不当に低い点数をつけられ、ネタにされるようなキャラクターがいなかったので、どのような意図があったのか。出場した他のキャラクターとやっていることは同じであり、何らかの規則性に基づいた落ち度があったわけでもないのに、特定のキャラクターのみを貶めているような描写で不愉快だった。むしろこれこそいじめではなかろうか。しかも、この時ツルギが着用している衣装は、バニーマジシャンクラシックワンピであり、『劇場版プリパラ み~んなあつまれ!プリズム☆ツアーズ』で春音あいらが着用していた衣装なのと、髪型は南みれぃの髪型である。ツルギだけではなく、これらのキャラクターを貶める意図もあったのではないかと疑わせる。