勝敗の意外性とは何か
スポーツの試合観戦であったり、あるいはフィクションのキャラクター同士の勝負であったり、なぜ人はその勝敗によって喜んだり落ち込んだりできるのか。以前にも書いたが、恐らくそれは予測とエラーにあるのではないか。認知神経科学や心の哲学では、人が知覚している世界とは、脳が予測した世界であるという説がある。視覚や聴覚などからの感覚信号と予測を比較して、エラーがあれば予測は更新される。その繰り返しによって予測のエラーは最小化され、外界をそれなりに適応的に予測できるようになる。予測の更新がなければ脳は何も感じない。
勝敗の結果というのは、予測の更新なわけだ。結果が出る前にいくら勝敗を予測しても、結果として勝敗を確認するまでは確信を持てず、勝敗の可能性はどちらも残されている。どれだけ力の差がある者同士でも、結果を確認することで不確かさは確認する前と比較して減るだろう。だからその結果によって感動できる。そして大番狂わせのように、予測とかけ離れた結果ほど多くの情報が得られるため、より感動も強くなるのだろう。
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